生活保護を受けるための条件
生活保護は最低生活費を保障する制度です。 そのため、暗黙的な前提条件として、収入が最低生活費を下回っている必要があります。
しかしそれ以外にも、生活保護を受けるためにいくつか満たすべき要件があります。
生活保護法第二条
すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
その要件は法第四条で以下のように定められています。
生活保護法第四条
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
要約すると、
- 資産があれば活用すること
- 能力があれば活用すること
- 扶養などの制度を優先して使うこと
- 急迫した事由があれば免除されること
それぞれについて説明します。
1. 資産の活用
生活保護を受けるためには資産を活用する必要があります。 つまり、最低限度の生活に必要な資産はそのまま利用し、そうでない資産は売って生活費に充てる必要があります。
具体的に何が必要で何が不要とされるかは、
を参照します。
これらの通知は厚労省から保護の実施機関に宛てた指示書のようなものです。 そのため国民に対する直接の法的拘束力はありませんが、保護の実施機関はこれに従って可否や金額を決定します。 さらに裁判の根拠として用いられる(裁判規範性がある)ことがあるので、とても重要な文書です。 詳しくは通知についてのページで説明しています。
とはいえそう構える必要はありません。 「普通の家庭」が持っていそうなものは基本的に保有できます。
局長通知
(4) その他の物品
ア 処分価値の小さいものは、保有を認めること。
イ ア以外の物品については、当該世帯の人員、構成等から判断して利用の必要があり、かつ、その保有を認めても当該地域の一般世帯との均衡を失することにならないと認められるものは、保有を認めること。
課長通知
「一般世帯との均衡を失することにならない」場合 とは、当該物品の普及率をもって判断するものとし、具体的には、当該地域の全世帯の 70%程度(利用の必要性において同様の状態にある世帯に限ってみた場合には 90%程度)の普及率を基準として認定すること。
申告の方法は生活保護の申請時に自己申告です。
銀行預金、家、車など、外から調べられる資産は申告が漏れると指摘されますが、 家で特に目立たず保管しているものはまず見つかりません。
不正受給を推奨しているのではなく、ただ重く考える必要はないということです。 故意に隠したのでない限り処分を受けることもありません。
では、中でも多くの人に関係がありそうな資産をピックアップします。 ここに記載されていない場合は、各通知を直接参照してください。
家
住んでいる家で、高価すぎない(2000 万円程度が目安)ものは保有できます。
局長通知 > 資産の活用 > 土地 > 宅地
次に掲げるものは、保有を認めること。ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認め られるものは、この限りでない。
...
ア 当該世帯の居住の用に供される家屋に付属した土地で、建築基準法第 52 条及び第 53 条に規定する必要な面積のもの
局長通知 > 資産の活用 > 家屋
(1) 当該世帯の居住の用に供される家屋
保有を認めること。ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものは、この限りでない。
自動車、バイク
障害者、公共交通機関がない、深夜勤務などの場合は保有できます。 ただし、以下のように条件を満たす必要があります。
課長通知
問 9 次のいずれかに該当する場合であって、自動車による以外に通勤する方法が全くないか、又は通勤することがきわめて困難であり、かつ、その保有が社会的に適当と認められるときは、 次官通知第 3 の 5 にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」として通勤用自動車の保有を認めてよいか。
1 障害者が自動車により通勤する場合
2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合
3 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合
4 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合答 お見込みのとおりである。 なお、2、3 及び 4 については、次のいずれにも該当する場合に限るものとする。
(1) 世帯状況からみて、自動車による通勤がやむを得ないものであり、かつ、当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。
(2) 当該地域の自動車の普及率を勘案して、自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。
(3) 自動車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。
(4) 当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。
今は条件を満たしていなくても、6 か月は猶予があります。
課長通知
問 9 の 2 通勤用自動車については、現に就労中の者にしか認められていないが、保護の開始申請時においては失業や傷病により就労を中断してい るが、就労を再開する際には通勤に自動車を利用することが見込まれる場合であっても、保有している自動車は処分させなくてはならないのか。
答 概ね 6 か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって、保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるものについては、次官通知第 3 の 2「現在活用されてはいないが、近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持に実効があがると認められるもの」に該当するものとして、処分指導を行わないものとして差し支えない。ただし、維持費の捻出が困難な場合についてはこの限りではない。
2. 能力の活用
生活保護を受けるためには能力を活用する必要があります。 つまり働けるなら働けということです。
しかしこの要件は「急迫した事由」によって免除することができます。
「急迫した事由」とは「生存が危うくされるとか, その他社会通念上放置し難いと認められる程度に状況が切迫している場合」のことです(判例など)。
お金を使い切って明日食べるものもないような状態になれば、それはまさに急迫した事由であり、この要件は免除されます。